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最近話題になっている片頭痛予防注射薬

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今年4月に本邦で発売された、エムガルティ(ガルカネズマブ)の勉強会がありました。頭痛診療ではご高名な、聖マリアンナ医科大学病院内科学(脳神経内科)教授 秋山久尚先生にご講演いただき、恩師のたぐち脳神経外科クリニック院長 田口博基先生と座長をさせていただきました。ご意見番として、にわメディカルクリニック院長 丹羽義和先生にも参加いただきました。

最近発売された3つのCGRP関連の注射薬は、当院では現在35例の方が治療を受けられております(うちエムガルティ27例)。片頭痛の痛みのメカニズムで血管拡張と痛みを引き起こすCGRPという物質に対する抗体治療薬です。
秋山先生の自検例では、エムガルティを受けられた患者さんの治療満足度は90%におよび、 4か月後も満足度85%とのことでした。診断と適応を正確にすれば恩恵は大きいと思います。
当院の症例でも、注射後1週間で頭痛が大幅に低減した著効例~数か月繰り返し投与することで効果の上乗せ効果を認める症例もいます。1回のみ注射をうって数か月様子見ているかたもいますが、その方は従来薬でも十分楽になり、効果が長く続く症例もあると感じました。当院では1例、効果が実感できず、アイモビーグに切り替えた症例があります。
秋山先生も述べられた治療満足度は、頭痛自体の消失以外に、頭痛で仕事を休むことがなくなった・ トリプタン製剤やNSAIDSの効果が高まった等、様々な形でQOL改善がえられたことにあります。また、感覚過敏・吐き気・集中困難など、片頭痛に随伴する違和感も低減する効果が認識されつつあり、別会で間中信也先生が、brain fogが晴れてcrystal clearになるといわれておりました。

気になる副作用は、注射部位の痛みが主で大きな有害事象は今のところありません。17歳以下の学生・受験生や、挙児希望・不妊治療中・ 妊婦にも安全にも使えるように適応幅が広がるとよいなと感じます(今のところ制限付きです)。
治療効果判定には、頭痛ダイアリーのほか、定期のHITやMIDASは有効で、当院でも積極的に導入する必要がありそうです。CGRP注射薬に限らず従来予防薬でも、片頭痛治療はひとたび軌道に乗ってしまえば、各自使いやすい主要評価項目での治療効果判定でもよいと思いますし、様々な頭痛モニタリングアプリを活用している患者さんもいます。患者さん側から教えていただく情報もたくさんあります。
さらに気になる辞め時に関しても議論がありました。まだ発売間もないので確固たる意見はありませんが、小生の意見としては、1か月周期から伸ばしていく、例年頻度の多い時期にスポットで使う 、辛いことがあって薬物乱用モードに入った時にスポットで使うなどもあると思います。また、純粋な片頭痛ではなく、心因反応の影響が強い患者さんには、従来薬のトリプタノールやデパケンの併用も選択肢になります。

この記事の執筆者

院長 日暮 雅一 ひぐらし まさかず

院長日暮 雅一 ひぐらし まさかず

略歴

1999年 横浜市立大学医学部 卒業
横浜市内複数の基幹病院で修練
2005年 小田原市立病院 
脳神経外科主任医長
(2005年度 脳神経外科部長代行)
2009年 横浜市立大学大学院医学研究科
脳神経外科助教
(2011年度 脳神経外科教室医局長)
2012年 Australia Macquarie大学留学
医工連携学research fellow
2014年 新緑脳神経外科・
横浜サイバーナイフセンター医長
2016年 ほどがや脳神経外科クリニック開設
2019年 医療法人社団 正念 設立

資格

  • 医学博士(神経薬理学)
  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本頭痛学会専門医/指導医
  • 日本脳卒中学会専門医/指導医
  • 日本認知症学会専門医/指導医
  • 認知症サポート医
  • 日本医師会認定産業医
  • 身体障害者福祉法15条指定医(肢体不自由 言語咀嚼)
  • 難病指定医
  • 自立支援指定医療機関(てんかん)

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