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血管性認知症

血管性認知症とは

血管性認知症とは、脳卒中(脳梗塞脳出血くも膜下出血)によって生じる認知症です。認知症の症状は脳卒中によって障害される脳の部位によって異なります。また、症状が出たり出なかったりすることもあり、「まだら認知症」と呼ばれることもあります。血管性認知症はアルツハイマー型認知症の次に多い認知症です。


血管性認知症の原因

血管性認知症の原因は、脳の血管が詰まり神経細胞への血流が不足することで神経細胞の機能が失われたり、脳出血によって溜まった血液に脳が圧迫されることです。


血管性認知症の症状(特徴)

「まだら認知症」と呼ばれる症状

血管性認知症では、障害を受けた部分の脳機能は低下しますが、障害を受けていない部分の脳機能は正常なままであるため、あることは完璧にできるがあることは全くできないなど、能力にムラが生じたり、時間帯によって能力差が生じたりする「まだら認知症」と呼ばれる症状が現れます。

抑うつ症状や怒りの感情が出やすい

血管性認知症では、障害を受けている脳の部位によって「できること」と「できないこと」が生じ、本人も頭ではわかっていてもできないことに直面するため、他の認知症と比べて抑うつ症状になりやすかったり、怒りの感情が起こりやすくなったりします。

感情のコントロールが難しい

感情のコントロールが困難になり、喜怒哀楽の感情が通常よりも現れやすくなったり、逆に現れにくくなったりします。

1日の中でも症状の変動が起こる

1日の中でも時間帯や体調によって「できること」と「できないこと」が変化することがあります。

さまざまな症状が出やすい

脳血管性認知症では、脳細胞の死滅によって起こる認知症であることから、歩行障害や運動麻痺、感覚麻痺、言語障害、嚥下障害、排尿障害などの症状が認知症の早期から起こることが多くあります。

「階段状」に進行する

脳血管性認知症は、改善と悪化を繰り返しながら段階的に症状が悪化していくという特徴があります。そのため症状が安定していると思ったら、突発的に新たな症状が加わることがあります。


血管性認知症の治療

血管性認知症の治療では、脳のダメージを直接回復させることが困難であるため、生活習慣の改善や薬物療法、リハビリテーションなどの進行を遅らせる治療を行います。また、血管性認知症は、高血圧や糖尿病、心房細動、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、肥満、脂質異常症がリスク因子になるため、これらの疾患の治療や予防をすることが、血管性認知症の予防につながります。また、認知症は、生活能力の低下や寝たきりになることで脳循環や代謝が低下し、進行することがあるため、脳梗塞などを発症しても、早期にリハビリテーションを開始し、寝たきりにさせないことが重要です。


血管性認知症の余命(どれくらい生きられる?)

血管性認知症の余命はアルツハイマー型認知症の余命よりも短いとされています。血圧のコントロールを適切に行い、脳出血や脳梗塞の再発を防止することで、予後の改善が期待できますが、寝たきりになることで心肺機能が低下したり、誤嚥による肺炎を起こすことで予後が左右されるため、様々なことに注意する必要があります。


血管性認知症に関する
よくある質問

血管性認知症は女性に多いですか?

血管性認知症は男女ともに起こりますが、やや男性に多い傾向があります。これは、高血圧や糖尿病、喫煙など脳血管障害のリスクが男性に多いことが関係しています。ただし、高齢になると男女差は少なくなります。

血管性認知症は回復しますか?

一度失われた脳の機能を完全に回復させることは難しいですが、早期に治療を行えば進行を遅らせることが可能です。高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病をしっかり管理することが再発予防につながります。

血管性認知症になると性格が変わる(キレやすい)ことありますか?

はい、あります。血管性認知症では感情のコントロールが難しくなり、怒りっぽくなったり、些細なことでイライラすることがあります。これは脳の前頭葉など、感情を調整する部分の血流障害が関係しています。

血管性認知症になりやすい年齢(好発年齢)はありますか?

一般的には60歳以降に多くみられます。脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が増える年代と重なるためです。高血圧や動脈硬化の管理が重要になります。

血管性認知症になりやすい人(特徴)はありますか?

高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、心房細動などの脳血管リスクを持つ人は発症しやすい傾向にあります。生活習慣の改善と、定期的な脳ドックや健康診断が予防につながります。

血管性認知症に特有の歩き方はありますか?

はい、特徴的な歩行がみられることがあります。足をすりながら歩く「小刻み歩行」や、バランスを崩しやすい「ふらつき歩行」などです。これは脳の深部や小脳など、歩行を司る部位の障害によって起こります。

血管性認知症に効く(有効)な薬はありますか?

血管性認知症そのものを治す薬はありませんが、脳血流を改善したり、脳梗塞の再発を防ぐ薬(抗血小板薬など)が使用されます。また、記憶や意欲の低下が強い場合には、アルツハイマー型認知症治療薬が併用されることもあります。

この記事の執筆者

院長 日暮 雅一 ひぐらし まさかず

院長日暮 雅一 ひぐらし まさかず

略歴

1999年 横浜市立大学医学部 卒業
横浜市内複数の基幹病院で修練
2005年 小田原市立病院 
脳神経外科主任医長
(2005年度 脳神経外科部長代行)
2009年 横浜市立大学大学院医学研究科
脳神経外科助教
(2011年度 脳神経外科教室医局長)
2012年 Australia Macquarie大学留学
医工連携学research fellow
2014年 新緑脳神経外科・
横浜サイバーナイフセンター医長
2016年 ほどがや脳神経外科クリニック開設
2019年 医療法人社団 正念 設立

資格

  • 医学博士(神経薬理学)
  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本頭痛学会専門医/指導医
  • 日本脳卒中学会専門医/指導医
  • 日本認知症学会専門医/指導医
  • 認知症サポート医
  • 日本医師会認定産業医
  • 身体障害者福祉法15条指定医(肢体不自由 言語咀嚼)
  • 難病指定医
  • 自立支援指定医療機関(てんかん)

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