筋トレ頭痛(運動時頭痛)とは
運動の最中、特にウェイトトレーニングの最中に急に頭痛がした。しばらくして収まったが、その後同じ運動のたびに同じような頭痛になる。最近は運動時以外にもなることがある。
といった主訴で来院される方もいらっしゃいます。だいたい20-50才くらいで、男性に多いです。これは国際分類でいう運動時頭痛というくくりにはいるものです。上記のような典型的なものは、伺うだけでRCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)だなと思いますが、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血やRCVSの怖い状態でないかMRI+MRAが必要になります。間中信也先生の経験を伺ったところ、「RCVSのミニ版だよね」とのことでした。
予防薬や痛み止めで改善がみられ、多くは1か月程度で自然に消退します。こどもの場合は、カロナールを運動前に内服します。運動時の水分補給に気を付け、頭痛時は冷却すると緩和されることが多いです。
後部筋群の筋筋膜損傷や、片頭痛、静脈圧亢進(いきみ)で増悪する二次性頭痛などが鑑別にあがります。初めて経験される場合は、頭痛専門医を受診したほうがよいと思います。
筋トレ(運動)により頭痛が生じる原因
もともとの慢性頭痛が運動によって誘発される
もともと片頭痛などの慢性頭痛をお持ちの方は、筋トレやスポーツなどによって頭痛が引き起こされることがあります。低血圧や疲労や脱水によって片頭痛は引き起こされます。
後頚部の筋肉への過剰な刺激
筋トレやスポーツによって腕・肩・首に過剰な負荷がかかると、後頚部(首の後ろ)の筋肉がダメージを受け、頭痛が引き起こされることがあります。上肢への負担が大きい筋トレや首をよく使う格闘技やバドミントン、バレーボールなどの競技を行う前は、ストレッチなどの準備運動を十分に行いましょう。
脱水症状
激しい運動によって大量の汗をかき、体内の必要な水分が不足すると、脱水症となり頭痛が生じることがあります。頭痛のほかにも、めまいや吐き気などの症状が起こります。
酸欠状態
激しい運動や登山などで酸欠状態になると、二酸化炭素の排出もおくれて血液中の二酸化炭素が増えて血管が拡張し頭痛が引き起こされることがあります。また、マスクの着用によっても酸欠になることがあるため、注意しましょう。
筋トレ頭痛への対処法
運動時にのみ頭痛が起こる場合は、運動時頭痛であると考えて問題ないでしょう。運動時頭痛は、運動によって引き起こされるため、一番の対処法は、スイッチの入る負荷を見極めてそれよりも軽負荷でトレーニングをすることです。一定期間がすぎると自然軽快することが多いです。運動中に頭痛症状が現れたら、休憩をとり運動を制限することです。頭痛が起こりにくくする予防薬もありますので相談ください。運動は健康に良いため、頭痛にうまく対処しながら運動を継続していく工夫をしましょう。十分な準備運動や水分補給、必要な場合は薬物療法を組み合わせて、症状の改善、対処を行っていきましょう。
運動量の調節
運動中に頭痛が起こりやすい場合は、運動量を調節し、後頚部の筋肉に過剰な負荷がかかるようなトレーニングは避けましょう。その日の体調に合わせた運動メニューを組むことも重要です。
十分なウォームアップ
運動の前には十分にストレッチや準備運動を行い、筋肉へのダメージを予防しましょう。
十分な水分補給
脱水症を予防するために、運動時に限らず日常的にこまめな水分補給を行いましょう。運動中に脱水症状が現れた場合は、風通しの良い日陰に移動し、症状が落ち着くまで休憩を取りましょう。
痛みを感じたら運動を中止する
運動中に頭痛を感じたら、運動を中止しましょう。特に、片頭痛の発作がおきているときは、症状が軽い段階で運動を中止することが症状の悪化を防ぐ上では重要です。
薬物療法
運動時頭痛の薬物療法として、インドメタシンなどの鎮痛剤の服用が有効であるとされています。できれば二次性頭痛が起こっていないかの確認も含め頭痛外来の受診を進めます。問題なければ、予防薬および万一可逆性脳血管攣縮症候群に展開していないかどうか確認を追跡していくことは大切かと思われます。服用は医師の指示に従って行いましょう。
患部を冷やす
頭痛が血管の拡張が原因の場合は、患部を冷やして血管を収縮させることで症状の緩和が期待できます。
筋トレ頭痛に関するよくある質問
筋トレの翌日に起こる頭痛は筋トレ頭痛ですか?
筋トレ頭痛は、主に運動中や直後に生じる頭痛を指します。翌日に痛みが出る場合は、筋肉のこわばりや血行の変化、あるいは脱水・睡眠不足などの影響によることが多いです。ただし、毎回トレーニングの翌日に似たような頭痛が続く場合には、筋肉の緊張による頭痛や片頭痛の誘発、血管の攣縮(RCVS:可逆性脳血管攣縮症候群)などが関係している可能性もあるため、頭痛外来などで一度相談するのが安心です。
筋トレ頭痛は筋トレの最中にも起こりますか?
はい。典型的な筋トレ頭痛(運動時頭痛)は、トレーニング中または終了直後に突然起こるのが特徴です。特に、息を止めて力む動作のときに、後頭部あたりへ鋭い痛みを感じることがあります。多くは一時的なもので自然に治まりますが、強い痛みを繰り返す場合はくも膜下出血などの重篤な疾患を除外する必要があるため、MRIやMRA検査を受けておくとよいでしょう。当院では、状況次第ではありますが、受診日当日のMRI検査にも対応しています。まずはお気軽にご相談ください。
筋トレ頭痛がある場合、筋トレは休んだ方が良いですか?
基本的に頭痛になる負荷以内でメンテナンスをして、能力をおとさない配慮をしながら、軽減をまつことが基本です。筋トレ頭痛は血管の拡張や首の筋肉の過緊張が関与することがあり、症状を残したまま運動を続けると悪化するおそれがあります。痛みが落ち着いてから再開する際は、軽めの負荷から始めて十分にウォームアップを行うことが大切です。繰り返す場合は、インドメタシンなどの予防薬を検討することもありますので、医師に相談してください。
こめかみが痛くなるのは筋トレ頭痛ですか?
筋トレ頭痛の多くは後頭部や頭全体にかけてのズキズキする痛みが中心ですが、力みや姿勢の影響でこめかみ(側頭部)に痛みが出ることもあります。ただし、こめかみの痛みは片頭痛や緊張型頭痛などでもよく見られる症状です。繰り返し同じ場所が痛む場合や、脈打つような痛みが強い場合は、頭痛専門医での評価を受けることをおすすめします。
筋トレ頭痛は何日くらいで治まりますか?
軽い筋トレ頭痛であれば、数日から1週間程度で自然におさまることがほとんどです。一方、RCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)の軽症例など、血管の異常が関与するタイプでは、1ヵ月程度で改善するケースもあります。もし痛みが長引く、頻繁に再発する、または性質が変わってきた場合には、MRI・MRAで脳血管の状態を確認しておくことが推奨されます。
筋トレによって頭の血管が切れることはありますか?
通常の筋トレで血管が破れることはまずありません。ただし、息を止めたままの高負荷トレーニングで一時的に血圧が大きく上昇すると、ごくまれに脳動脈瘤の破裂などを引き起こす可能性があります。特に「突然バチッと痛むような強烈な頭痛(雷鳴頭痛)」が起きた場合は、くも膜下出血の危険サインの可能性もあるため、速やかに医療機関を受診してください。安全のためには、呼吸を止めない、こまめな水分補給、その日の体調に合わせた負荷調整を心がけましょう。
RCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)と筋トレ頭痛の関係は?
RCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)は、脳内の血管が一時的に強く収縮することで生じる頭痛です。突然、雷に打たれたような激しい痛み(雷鳴頭痛)が起こるのが特徴で、痛みは数日から数週間ほど続くことがあります。筋トレ頭痛(運動時頭痛)の中には、このRCVSの軽症例と考えられるケースもあります。筋トレで強く力んだり息を止めたりすると、急に血圧が上昇して脳血管が一時的に狭くなり、その結果RCVSに似た頭痛が現れることがあります。多くの場合は一過性で自然に軽快しますが、痛みが強烈である、何度も繰り返す、吐き気やめまいを伴うといった場合には、RCVSやくも膜下出血など重い疾患の可能性があるため注意が必要です。MRIやMRAなどの画像検査で脳血管の状態を確認することで、危険な疾患かどうかを判断できます。したがって、普段とは異なる強い頭痛を感じたときは、無理をせずに運動を中止し、早めに神経内科や頭痛外来を受診することが重要です。

