けいれんとは
けいれんとは、自分の意思とは無関係に、筋肉が強く収縮する発作性の運動症状のことで、手足を突っ張るようなものや、手足を強く曲げてしまうようなものがあります。
けいれんを起こす疾患
けいれんを起こす主な疾患は以下のようなものがあります。
脳炎・髄膜炎
脳炎・髄膜炎とは、ウイルスや細菌が感染することで、脳・髄膜に炎症が起こった状態です。症状は、けいれんや高熱、頭痛、嘔吐、意識がもうろうとする、異常な行動などがあり、早急な治療を必要とする疾患です。
脳出血・脳梗塞・頭部外傷
脳出血や脳梗塞、頭部外傷によってけいれんが引き起こされる場合があります。けいれんの他に、頭痛や吐き気、ろれつが回らない、手足に力が入らない、意識がもうろうとするなどの症状が突然起こることがあります。
破傷風
破傷風とは、土や動物の糞などに含まれる破傷風菌が、傷口から体内に入り込み起こる感染症です。感染すると、口や首、顔面がこわばり、口が開けられなくなり、その後全身のけいれんが起こります。早期の治療が必要な疾患です。
アルコールの離脱症状
アルコールを長期間にわたって大量に摂取していた方が、数時間から数日間の断酒を行うと、手足のけいれんや全身のけいれん、大量の発汗などの離脱症状が起こることがあります。
子癇
子癇とは、妊娠高血圧腎症の女性に起こるけいれん発作です。妊娠20週以降から出産後の人に起こり、高血圧やたんぱく尿を併合している方に起こりやすいとされています。子癇は、母親だけでなく、胎内の赤ちゃんにも影響を及ぼすため、妊娠中にけいれんがあった場合は、救急受診が必要です。
受診の目安とポイント
けいれんが初めて起こった場合は、一度神経内科や脳神経外科を受診しましょう。また、全身のけいれんが起こり、数分以上続いたり、何度もけいれんを繰り返す場合や、発熱や意識障害を伴う場合は、すぐに救急受診しましょう。妊娠中のけいれんの場合は、かかりつけの産婦人科や救急外来を受診してください。また、過去にてんかんと診断されている場合は、主治医の先生の指示に従ってください。受診時には、最近の体調や治療中の疾患、既往歴、過去に頭部のけがをしたことがないか、服用中の薬やサプリメントなどについて伝えましょう。過去にけいれんを起こしたことがある方は、けいれんの頻度やけいれんが起きたときの様子を伝えましょう。
身近な人がけいれんを起こしたら
身近な人がけいれんを起こした際は、まずは周囲の火や熱湯、倒れそうなもの、鋭利なものといった危険なものを遠ざけ、高所や階段、車道、線路、お風呂、機械の近くなどの危険なところから離れさせ、安全を確保しましょう。安全の確保ができたら、仰向けに寝かせ、衣服の襟元やボタン、ベルトなどを緩めて体を楽にしましょう。また、けいれんが続いた時間やけいれんが始まった部位など発作の様子を観察しておきましょう。なお、けいれんで舌を噛みそうになっている場合やいびきがひどく窒息しそうな場合は、下顎を下から優しく押し上げてください。指やタオルを口の中に入れたりするのは、指をかまれたり、窒息の危険性があるため避けましょう。吐きそうになっている場合は、体または頭を横に向けて、吐いたもので窒息しないようにしましょう。これらと並行して、救急車の手配などの対応が必要な場合もあります。
けいれんの日常生活上の原因と対処法
日常生活上の原因によってけいれんが起こることがあります。
高熱による熱性けいれん
6ヵ月~5歳くらいの子どもは体温調整機能が未熟であるため、38℃以上の高熱を出した際に、意識障害やけいれんを生じることがおります(熱性けいれん)。通常は、成長とともに体温調整ができるようになり、熱性けいれんは起こらなくなります。熱性けいれんを起こした場合は、通常のけいれんを起こしたときと同じように対処してください。熱性けいれんの予防には、発熱の早期(37.5~38℃)にジアゼパムという座薬を使用することが有効とされています。ただし、使用後にぐったりするといった副作用があるため、使用の際は医師の指示に従ってください。
睡眠不足や精神的ストレス
てんかんなどのけいれん性疾患を持っている場合は、睡眠不足や精神的ストレスによってけいれんを起こす場合があります。睡眠不足の解消には規則正しい生活を心がけることが重要です。また、身体的・精神的ストレスがかかる環境を避け、飲酒も控えましょう。また、内服中の睡眠剤を突然やめることが原因でけいれんを起こす場合もあります。
低血糖
低血糖によってけいれんが起こる場合があります。低血糖は糖尿病の治療中の患者様に多く見られるほか、何らかの疾患や薬剤による影響、食生活によっても起こります。低血糖を起こしやすい場合は、飴やブドウ糖タブレットなどを持ち歩き、低血糖の症状が現れた際に速やかに摂取しましょう。何らかの疾患によって低血糖が起きている場合は、食事を少量ずつ数回にわけて摂取することが有効です。糖尿病以外で低血糖が起こり繰り返している場合は原因の特定のために医療機関での検査が必要です。
けいれんに関するよくある質問
けいれんとひきつけの違いは何ですか?
「けいれん」とは、本人の意思とは無関係に筋肉が強く収縮する現象を指します。一方、「ひきつけ」という言葉は、特に乳幼児が発熱をきっかけにけいれんを起こしたときに使われる一般的な表現です。つまり、医学的には「ひきつけ」は「けいれん発作」の一種であり、意味として大きな違いはありません。ただし、成人のけいれんを「ひきつけ」と呼ぶことは通常ありません。
けいれんの種類はどのようなものがありますか?
けいれんは、起こる範囲や意識の有無によっていくつかのタイプに分類されます。
- 全身けいれん(全般発作):全身の筋肉が同時に硬直したり、全身を震わせるようにけいれんするタイプです。意識を失うことが多く、転倒を伴うこともあります。
- 部分けいれん(焦点発作):脳の一部分で異常な電気活動が起こるタイプで、手や顔など体の一部だけがけいれんします。意識がある場合とない場合があります。
- 強直性けいれん・間代性けいれん:筋肉が長く硬直する状態を「強直性けいれん」、収縮と弛緩を繰り返す状態を「間代性けいれん」と呼びます。
- ミオクローヌス(筋肉のピクつき):筋肉が突然ピクッと動く短いけいれんで、てんかんの一症状としてみられることもあります。
意識下でのけいれんはどんな原因が考えられますか?
意識が保たれた状態で起こるけいれん(焦点発作など)は、脳の特定の領域で異常な神経活動が起きることが原因と考えられます。てんかんの一部のタイプで見られるほか、脳梗塞や頭部外傷、脳腫瘍、脳炎や髄膜炎などの感染症でも発生することがあります。また、過度な緊張や不安、過換気(浅く速い呼吸)によって、一時的に手足がしびれたりけいれんが起こる「過換気症候群」もあります。繰り返す場合や持続する場合は、脳神経外科で原因を詳しく調べることが重要です。
けいれん時の看護の注意点はありますか?
けいれんが起きた際の看護では、患者様の安全を確保しながら観察を行うことが最も大切です。以下は主な注意点です。
- 周囲の家具や危険物を遠ざけて、けがを防ぐ
- ベルトや襟元をゆるめ、呼吸しやすくする
- けいれんによって舌を噛みそうであっても、口に物を入れない(窒息の危険があるため)
- 嘔吐や唾液が多い場合は、顔や体を横向きにして気道を確保する
- 発作の開始時刻・持続時間・体の動き・意識の有無などを記録し、医療者へ伝える
けいれんが5分以上続く場合や、何度も繰り返す場合、また意識が戻らない場合は救急要請が必要です。妊婦や子ども、高齢者では特に早めの対応が求められます。
勝手に筋肉がぴくぴく動くのはけいれんですか?
筋肉が自分の意思とは関係なくぴくぴく動く場合、多くは「けいれん」ではなく、筋肉の一部が一時的に収縮する現象(筋線維束攣縮:きんせんいそくれんしゅく)と呼ばれる状態です。たとえば、「まぶたがぴくぴくする」「ふくらはぎが勝手に動く」といった症状がこれにあたります。このような動きは、疲労や精神的ストレス、睡眠不足、カフェインの過剰摂取、または電解質(カルシウム・マグネシウムなど)の不足によって引き起こされることがあります。多くは一過性で自然に治まりますが、もし頻繁に起こる・体の複数の部位にみられる・力が入りにくいといった症状を伴う場合は、神経や筋肉の異常(たとえば運動ニューロン疾患など)が隠れている可能性もあります。したがって、軽度のピクつきは「けいれん」とは異なり、筋肉の一部が自律的に動いているだけのことが多いですが、症状が続く場合や心配な場合は脳神経内科での受診を検討しましょう。

