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椎骨動脈解離-STROKE 2024(大島先生よりご寄稿)

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当院で非常勤外来を担当している大島聡人です。今回は、3月7日に参加した全国学会「STROKE2024(日本脳卒中学会総会)」での私の口演発表についてお話ししたいと思います。

発表のテーマは「椎骨動脈解離」という疾患に関するものです。椎骨動脈とは、脳に栄養を供給する重要な血管の一つで、特に脳幹や小脳に栄養を送っています。この血管の壁が何らかの原因で内部から剥がれてしまう病気を椎骨動脈解離と呼びます。この状態が進行すると、最悪の場合、命に関わる「くも膜下出血」や「脳梗塞」を引き起こす可能性があります。

日本では特にこの疾患が多く見られ、くも膜下出血や脳梗塞を伴う椎骨動脈解離については多くの研究が行われてきました。しかし、最近ではMRIなどの画像診断技術の進歩により、くも膜下出血や脳梗塞を伴わない軽症の椎骨動脈解離の患者さんが診断されることが増えています。これらの患者さんは、一般的には予後が良いとされていますが、中には重大な合併症を発症するケースもあり、その予後や予後を予測する指標についてはまだ十分にはわかっていませんでした。そこで、私たちは当院で診断された椎骨動脈解離の患者さんのデータを詳細に分析し、予後を予測するための重要な因子を見つけ出しました。この成果をSTROKE 2024で発表し、現在は論文としての発表に向けて準備を進めています。

具体的には、MRIで精査された11,500人の患者さんのうち、132人に急性期の椎骨動脈解離が見つかりました。そのうち、安定期に入るまでフォローが可能であった105人の患者さんを対象に研究を行いました。その結果、一定期間のフォローアップ中にくも膜下出血や脳梗塞を発症した患者さんはいませんでしたが、病変部が動脈瘤として残り、さらには動脈瘤が拡大して外科手術が必要になった方が一部でいました。これらの患者さんでは画像上のある特徴が見られ、これが将来的なリスクを示唆している可能性があります。この特徴については専門的な内容になる上、論文が世に出るまではここに書けないのですが、椎骨動脈解離の診療において重要なポイントになるのではないかと考えています。

今回の学会発表では、発表後の質疑応答で鋭い質問やコメントをいただき、とても実りのあるディスカッションができました。さらに、全国の多くの先生が本疾患を一生懸命に研究した研究成果の発表を拝聴し、大変勉強になりました。

この研究成果が、椎骨動脈解離の診療において役立つことを願っています。また、この研究がさらに発展し、新たな知見が得られることを期待しています。当院では、診療だけでなく、このような研究活動を通じて医学の発展に貢献していきたいと考えています。

この記事の執筆者

院長 日暮 雅一 ひぐらし まさかず

院長日暮 雅一 ひぐらし まさかず

略歴

1999年 横浜市立大学医学部 卒業
横浜市内複数の基幹病院で修練
2005年 小田原市立病院 
脳神経外科主任医長
(2005年度 脳神経外科部長代行)
2009年 横浜市立大学大学院医学研究科
脳神経外科助教
(2011年度 脳神経外科教室医局長)
2012年 Australia Macquarie大学留学
医工連携学research fellow
2014年 新緑脳神経外科・
横浜サイバーナイフセンター医長
2016年 ほどがや脳神経外科クリニック開設
2019年 医療法人社団 正念 設立

資格

  • 医学博士(神経薬理学)
  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本頭痛学会専門医/指導医
  • 日本脳卒中学会専門医/指導医
  • 日本認知症学会専門医/指導医
  • 認知症サポート医
  • 日本医師会認定産業医
  • 身体障害者福祉法15条指定医(肢体不自由 言語咀嚼)
  • 難病指定医
  • 自立支援指定医療機関(てんかん)

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