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認知症診療のいま

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都内で認知症の勉強会がありました。幅広い最先端の内容でした。中でも、認知症の正確な診断に検査はどこまで必要か、というトピックスが興味深かったです。以下の内容が、現状における大方のコンセンサスだと思います。(以下、ADアルツハイマー型認知症、DLBレビー小体型認知症、CHEIアリセプトなどのお薬)

・物忘れ、幻視、迷子、失行、パーキンソニズム、うつなどいずれの初発症状であっても、MRIやCTといった形態画像診断は推奨

・TPD(PART, SNAP)の可能性が否定できない場合、SPECTや場合によっては髄液検査。11CPIB(アミロイドPET)はADの確定診断には有効であるが、保険適応外。

・ADに、DLBやPSPなどの複合病理の可能性がある場合、シンチグラフィー。特に、MIBG+DATは感度・特異度ともに90%以上。

具合が悪くなってから一度も形態画像検査をされていない場合、絶対に落としてはいけない二次性認知症の鑑別のためにMRIはとても有効です。慢性硬膜下血腫や脳腫瘍、脳梗塞があるのに、CHEIが処方され、当院に精査にこられる患者さんもいらっしゃいます。問診や神経診察だけではいろいろな意見がでる場合でも、画像一発でだれもが納得する所見が得られます。両側の明らかな海馬萎縮があれば、積極的にADを支持する所見となります。ただ、MRIと一言で言っても、どのシーケンスをどこまで細かくとるかが重要になります。前頭葉や頭頂葉(特に内側面)などのdefault mode networkの器質性病変は、明らかな神経学的局所所見がとれないことも多く、漠然とした注意力の変動や、失読のみの場合もあります。しかし、患者さんをよく知るご家族は、何かいつもと違うということに気づき、受診につなげます。長く脳神経診療や研究をしていて思うのは、「脳は、脳以外の身体の異常感知には優れるが、脳自身の異常に対する警告は下手(特にnon eloquent)」です。くも膜下出血・髄膜炎・片頭痛などは、軟膜外の三叉神経領域ですので、これらも脳以外となります。たまに、「おい脳よ、なぜここまで我慢した」といいたくなるような症例もいます。

TPDに、CHEIが有効かどうかはよくわかりませんが、今までADと診断されていた中の20%程度は、TPDなどのnon ADというデータが増えてきています。MCIとの診断で生活指導中心とし、本人・家族の相談のうえ、追加検査の検討や、CHEI処方が実情ではないでしょうか。ただ、AD以外でもCHEIの有効性は示されつつあり、DLBへの処方も保険適応となりました。正確な診断には、やはり半年スパンの時間軸が必要となるのではないかと考えます。

複合病理とは、複数の認知症がかぶっている場合です。ADとして診療している方にパーキンソニズムや幻視が出現する場合、AD+DLBとなります。AD+VaDは多く、ほかにも+PSP, CBDなどいろいろ可能性があります。その鑑別に、MIBG/DATが有効です。70才未満の若めの場合は、髄液検査・遺伝子・PETなど含め、精査が必要かもしれません。

この記事の執筆者

院長 日暮 雅一 ひぐらし まさかず

院長日暮 雅一 ひぐらし まさかず

略歴

1999年 横浜市立大学医学部 卒業
横浜市内複数の基幹病院で修練
2005年 小田原市立病院 
脳神経外科主任医長
(2005年度 脳神経外科部長代行)
2009年 横浜市立大学大学院医学研究科
脳神経外科助教
(2011年度 脳神経外科教室医局長)
2012年 Australia Macquarie大学留学
医工連携学research fellow
2014年 新緑脳神経外科・
横浜サイバーナイフセンター医長
2016年 ほどがや脳神経外科クリニック開設
2019年 医療法人社団 正念 設立

資格

  • 医学博士(神経薬理学)
  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本頭痛学会専門医/指導医
  • 日本脳卒中学会専門医/指導医
  • 日本認知症学会専門医/指導医
  • 認知症サポート医
  • 日本医師会認定産業医
  • 身体障害者福祉法15条指定医(肢体不自由 言語咀嚼)
  • 難病指定医
  • 自立支援指定医療機関(てんかん)

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