脳腫瘍の最新治療(良性・悪性)-ビムパット
第98 横浜内科学会 神経研究会が第一三共と共催でありました。神経研究会では、内科疾患やクリニックの疾患が中心に議論される会でしたが、その中には外科治療が必要なものが含まれており、周辺学習の目的も期待して、今回小生が当番世話人であったため、下記日本の脳神経外科/脳腫瘍のトップリーダー2人に講演をお願いいたしました。
●野中洋一先生は、長らくDuke大学の福島孝徳先生のもとで修業をされ、頭蓋底手術の免許皆伝・伝道師と認められたお一人ですので、東海大学脳神経外科には手練れ用心棒がいるということです。学術活動も、頭蓋底領域周辺では多くの役員を務められております。小生も2008年ころ、フロリダの福島先生主催のcadaver dissection(ご献体で手術手技を練習する)に参加した折、野中先生は現地スタッフとして活躍されておりました。現在、同領域のトップリーダーとなった野中先生のご講演を拝聴できたのはありがたいことです。印象的な言葉は、神の手Dr福島と言われておりましたが、「一生懸命手術をしたら神様が必ず守ってくれる」ということです。日本にはお弟子さんも多く、福島先生は「三流は金を残し、二流は事業を残し、一流は人を残す」を実践された一流であったと感じました。
前半は、福島先生のもとでの多くの修行の話(実技訓練 論文 教科書の出版)など伺いました。
後半は、かかりつけ医や、一般の方の注意すべき脳外科疾患の症状をたくさんお示しいただきました。特に、三叉神経痛・顔面けいれんの顕微鏡手術の動画を拝見しましたが、まったく無駄な出血がなく、術野が白いのに感動しました。技術の高いひとは、止血操作が丁寧なため余計な出血をしない よく顕微鏡を動かして逆ファンネルで安全確認および十分な剥離をする 結果手術時間が早い というのは、小生が福島先生の本や、藤津先生、前教授の川原先生によくいわれた一流のあるべき手術 と教育されたことを思い出します。
●Q&A
質問① 横浜市立大学脳神経外科 講師 佐藤充先生
Q「手術方法が多岐にわたり、多くの脳外科医がいますが、十分な経験ができていない中、鍵穴手術などの高難度手術の学習はどうすべきか」
A「皆ができるわけではないが、各医師が目指す医師や一流の医師と多く議論し手術を重ねることが大切」
質問② 国立病院横浜医療センター脳神経外科 手術顧問 藤津和彦先生
Q「2024年2月に福島先生が他界された中、野中先生に期待することも多い。特に海綿状脈洞の手術に際しての積極的な技術の伝承をおこなってほしい」
A「ありがとうございます。(野中先生は日本鍵穴手術頭蓋底治療研究会 理事でもあります)」
●高橋雅道先生は、東京大学脳神経外科・UCLA・有明の国立がん研究センター中央病院という3つのグリオーマ(悪性神経膠腫)の総本山で研鑽された先生です。野中先生の赴任のあとに、昨年、現職に就かれました。雅道先生は、大学時代に合同スキー合宿であったり大会であったり、毎年数か月寝食をともにした仲間でもあります。悪性グリオーマは、5年生存率5%未満と長らくいわれた難治性疾患です。覚醒下手術awake surgeryで、機能温存しつつ最大限切除する大変な手術です。昨今がんゲノム治療という「がん遺伝子パネル検査」でプロファイルすることで、その腫瘍の最適な治療法を模索することにより、この予後不良が改善しつつあります。東海大学のほか、横浜市立大学・聖マリアンナ医科大学・神奈川県立がんセンターにも知恵と設備がそなわっているので、その病院にみてもらうことが重要です。将来は、民間から、同機関に集約して、国立がんセンターなどでビッグデータをまとめ、創薬などに利用されると考えます。
ビムパットなどの新規抗てんかん薬は、抗がん剤などとの干渉がすくなく、またてんかんを良く起こす疾患であるため、重宝されます。
●Q&A
質問① 横浜市立大学脳神経外科 助教 三宅勇平先生
Q「がん遺伝子パネル検査をいつやるべきか」「この検査のために再手術をする必要があるか」
A「再発時には確かに初発時と比べて様々な遺伝子異常が増加しているが、実際に治療の対象となるドライバー遺伝子異常が新しく入るわけでもないことが分かってきたので、現在は放射線化学療法が終了したところで速やかに提出する方針にしている」
質問② 神奈川県立がんセンター 部長 佐藤秀光先生
Q「GenMineTOP以前にパネル検査をやってしまった患者さんがこの検査を希望されるケースはありますか?その場合 保険適応はないとおもいますが、自由診療を含め どのように対応してますか?」
A「当院では対応していませんが、慶應大学など一部には自費診療で対応している病院があるようです。」