アルツハイマー型認知症に伴うBPSD-レキサルティ
BPSD Specialist Forum in Kanagawaがありました。第一部は、東京慈恵医科大学精神医学講座 教授 品川俊一郎先生より、「BPSDに対する薬物療法のこれまでとこれから」についてご講演いただきました。座長は、横浜舞岡病院 院長 認知症疾患医療センター長 加瀬昭彦先生でした。昨年9月にアルツハイマー型認知症に伴う、適応BPSD(認知症にともなう行動・心理症状)は、中核症状とくらべて周辺症状とよばれ、介護者の負担となる病態です。この治療薬は、認知症に伴うBPSDに関してはFDAからは寿命を短縮するため警鐘が鳴らされておりました。昨年9月、レキサルティ(ブレクスビプラゾール)が承認されたことは、患者家族含め大きな福音です。
品川先生より、BPSDにかかわる歴史のお話をいただきました。(焦燥 易刺激性 昂奮→過活動 攻撃)
100年前 55歳 嫉妬妄想 被害妄想 不眠 →アルツハイマー病の発見につながる
50年前 高度経済成長期 恍惚の人 徘徊 規制 幼児帰り の記載がある
25年前 BPSD概念の確立。 および、各種神経心理スケール開発(NPI BehaveADなど)非定型向精神薬の登場
20年前 高齢者認知症にFDA talk paperにて、死亡を早める警告
2013年 本邦における検証 J CATIAにおいても、2.5倍の死亡例
→これらをうけていままでは、うつ・てんかんの薬 オピオイドの処方が代用的に増えていった
2013年 「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」初版
→本年、第三版が改訂されました(品川先生は分担研究者)
2024年 レキサルティの上市
第2部では、「アルツハイマー型認知症の心理・行動症状への薬物療法について」~それぞれの診療の立場から~ショートレクチャーおよび質疑応答をいたしました。
「精神科 認知症疾患医療センター」 横浜舞岡病院 認知症疾患医療センター 副センター長 藤川美登里先生
舞岡病院は戸塚区の中核であり、600床のうち164認知症専用とのことです。主に、他院からの鑑別依頼・外来治療・入院治療業務があり、難治性BPSDの対応をしています。
陽性BPSDがある場合、ドネペジルなどのコリンエステラーゼははずす。センターに相談する場合、他科疾患の除外をしたうえで、情報提供には、具体的なエピソード(これはかかりつけ医が問診でエピソードを聴取する重要性もあります)、過去に使用して効かなかった薬(過鎮静含む)の情報など。
「有床診療所・老健施設・在宅医療・グループホームなど複合的在宅医療」 ソフィア横浜クリニック 院長 玉城貴啓先生
保健施は、在宅と病院のあいだの橋渡しの役割がある。多職種チームを活用して、シームレスな包括ケアを提供している。ポリファーマシー(一般的に6種類以上の薬)は、サルコペニアやフレイルの原因とものあるため、対応する必要がある。BPSDが増悪する場合もあり、副作用で薬が使いづらい場合は、非薬物的アプローチとして、患者個人の背景・家族関係・苦手な環境・不安対象を見極めて対応する。
「脳神経外科クリニック」 東戸塚脳神経外科クリニック 副院長 清水信行先生
小生クリニックと同様、Treatable Dementiaの除外に地域ニーズがあると考える。 患者さんで混雑したり、認知症以外の患者さんも多く、マンパワーも鑑み、神経心理スケールとしては、AASC(簡易BPSDスケール)は重宝している。BPSDの原因が何か、その分析にとりくむ姿勢を大切にしている。外来通院困難なケースは、疾患医療センターや、施設入所を検討する必要がある(レスパイトケア)。一方、小生も思うところですが、脳神経外科クリニックは敷居が低い(スティグマが少ない?)ため、preclinical~prodromalも多く来院され、DMT疾患修飾薬(レケンビ・ケサンラ)を必要に応じて提示する。
●加瀬先生クロージング 焦燥agitation治療薬として海外では扱われているレキサルティ agitaionとは、和訳すると、扇動する煽ることにより、本人に焦燥を惹起すること。焦燥含め陽性BPSDがある場合、背景因子を探る姿勢が必要。BPSDは同じ時間帯におこることも多い。環境調整からはじめてレキサルティを適宜使っていく。