認知症の最前線:共生社会の要素・wellbeingの尊重・正確かつ大量早期診断システムの開発
第14回日本認知症予防学会が開催されました。大会長がメモリーケアクリニック湘南 理事長 内門大丈先生、副大会長に栄樹庵診療所 繁田雅弘先生と、平素大変にお世話になっている先生方でして、私もお手伝いさせていただきました。
下記、シンポジウム座長以外にもいくつかお手伝いし、全国から多職種の多くの発表を拝見させていただきました。とても勉強になったので、いくつか要点を共有したいと思います。
●認知症学 ⊃ 治療 ⊃ 非薬物療法 ⊃
・社会資源 ⊃ インフォーマルケア ⊃ 認知症キャラバン→認知症サポーター育成による共生社会への協力・啓発・サポート(無料)
・チームオレンジ:地域の多職種サポーターで組み、認知症者への様々なサポートを行う(無料)
・出張保健師:いくつかの報告がありました。スーパーなどで、健康管理や認知症相談を行う(無料)
※無料:昨今問題となっている社会保険給付による貧困化に無関係にサービスを提供する点で日本の美徳さを感じました
●認知症学 ⊃ 治療 ⊃ 非薬物療法 ⊃
・一体的プログラム:栄樹庵で定期的に行われている認知症家族同士で時を過ごすことでよりよい状態を目指す支援(無料 定期的手引書を用いて評価していく 出会いの場という意味でミーティングセンターと呼ぶ)
・ピアサポート:診断後支援として「診断後空白期間」の解消に向け、患者さん同士で時を過ごし、共感・共助してwell beingを目指す。当院外来でも曜日が一緒の軽度の方々が、待っている間によくお話されており、これも一種のピアサポートの形なのかなぁと感じた次第です。(無料)
・診断後支援(絶望・傍観・スティグマ対策):診断後から人・もの・金の介入を積極的に行う(候補:ソーシャルワーカー、介護申請とケアマネ、家族、医師など)(無料 当院では診療後から家族とすすめる)
・認知症の方の意思決定サポートと共有の仕方 患者の状態によらずあらゆるヒントから患者から拾い上げ、共同意思決定をしていく(無料)
※無料:昨今問題となっている社会保険給付による貧困化に無関係にサービスを提供する点で日本の美徳さを感じました
(写真)栄樹庵 繁田雅弘先生を囲んで
●認知症学 ⊃ 啓発、一次予防
●認知症学 ⊃ 早期診断 ⊃ 認知症早期発見デバイスの開発
・自己申告調査票(特定地域コホート)、コグニケア参加者への認知機能の「見える化」、GDS(タッチパネル式老年期うつ病尺度GDS)によるMCIスクリーニング、eyeトラッキングStroop検査によるMCIスクリーニング、Cogstate Brief Battery ; CBB(ノウノウ)によるMCIスクリーニング、MENFISとQOLを併用したタッチパネルテストによる介護効果の視覚化など、各地からのトライを拝見した。タッチパネル式のツールはデータ管理も簡易で、人が付かなくてよく、クリニック業務においても多くの改善が期待できる・
・今後、採血でアミロイドの蓄積やリン酸化タウの蓄積などがわかるようになる研究もすすんでいる
・これらのことは、誤診が減り、病院負担が減り、社会保障費の流出を抑える効果がある。
本会は、認知症領域の日本の若きリーダーともなった、内門大丈先生のもとに、多くの人が参集協力しました。参会者数や演題数も最多のようです。とにかく神奈川の認知症医が多く参加していたことに加えて、上の写真のように、横浜市大関係者も多く協力しており、人徳の高さを改めて知る機会となりました。