パーキンソン病の最新治療(内科/外科)-オンジェンティス
小野薬品工業株式会社併催で、第45回NPネットワーク研究会がありました。今回は、小野薬品のパーキンソン病のwearing offおよび dyskinesiaを抑制する、オンジェンティス(一般名:オピカポン)を中心にパーキンソン病に関し勉強しました。
川崎先生は、300例以上のDBSを経験している、横浜市立大学付属市民総合医療センター 脳神経外科 講師です。パーキンソン病の外科治療について、とてもわかりやすくお話いただきました(当院HP「ふるえ外来」のページでも、パーキンソン病などの不随意運動に関しての外科治療について、まとめてありますので、参照ください)。
脳神経外科領域では、難治性パーキンソン症状に対して、脳の中央部にあるいくつかの神経核を刺激・破壊することで症状を改善させる仕事をしています。特に、wearing off(ドーパミンの薬効がきれて、パーキンソン症状が頻回に発生する)と、ジスキネジア(ドパミンが効きすぎて勝手に手足が動いてしまう)が対象になります。
DBS: deep brain stimulation 脳深部刺激療法:電極リードという線の先端に刺激するポイントが4つあり、ターゲットになるのは視床Vim核、視床下核(STN)、淡蒼球(GPi)です。錐体路という運動神経などに干渉してしまうと麻痺・しびれなどの合併症がでるので注意が必要です。振戦に対しては、Vim核の活動過剰があり、ターゲットとして多く施行されています。振戦以外の運動症状・オフ・ジスキネジアでのレボドパ減量の治療では、淡蒼球か視床下核がターゲットになることが多いです。DBS後、運動症状の改善に合わせてドパミン補充を中止すると、意欲低下や不安症状が出現することがあります(ドパミン離脱症候群)ので、段階的に減量する必要があります。
FUS: Focused Ultrasound Surgery 収束超音波療法:上記ターゲットを、頭皮切開などせずに超音波を収束して破壊する方法です。55度とターゲットに熱が出るので、MRI室でモニタリングしながら、冷却しながらやります。

水間先生より、神経内科管理の現状を詳細にお話いただきました。症状日誌が大切(頭痛でも頭痛ダイアリーが大切なように)であり、内服時間・ジスキネジア(効きすぎ)・ウェアリングオフ(薬効切れ)の現状を知ることで、適切な治療選択がわかります。
オンジェンティス(オピカポン)は、レボドパと併用し、パーキンソン病の症状の日内変動(オンの延長と、ウェアリングオフの短縮)を改善します。COMT阻害剤で、レボドパの代謝を抑えて、脳内へのレボドパ効果を長持ちさせます。OASIS試験の紹介がありました。オピカポンが運動症状の改善に加えて、非運動症状である睡眠障害に対しても有効であることが考えられます。 効きすぎる副作用として、ジスキネジアがあります。ほかにも便秘、低血圧、体重減少、幻覚、傾眠、などあります。
2種類のデバイス治療(Device aided therapy)
:デュオドーパ( レボドパ・カルビドパ水和物)持続投与:NJチューブ(経鼻空腸内投与用チューブ)→LCIG(レボドパカルビドパ経腸療法)があります。オピカポンを併用することもあります。皮膚メンテが必要で、水間先生は往診で治療効果を高めているとのことです。
:ヴィアレブ持続皮下注投与:レボドパ含有製剤で、皮下に留置した管を介して、専用の輸液ポンプから切れ目なくを投与します。
パーキンソン病は類縁疾患も多く、正しい診断と、専門医に指導を受けることが重要です。小生の身内にもパーキンソン病を伴う認知症がおり、その家族としてのサポートの大変さや余生の切なさを経験しました。
左より、
内門大丈先生 メモリーケアクリニック湘南 理事長
川崎隆先生 横浜市立大学市民総合医療センター脳神経外科 講師
水間敦士先生 東海大学医学部 内科学系神経内科学 准教授
馬場康彦先生 福岡大学医学部 脳神経外科学 教授
小生
井上祥先生 株式会社ジェノバ 取締役執行役員

