群発頭痛とは
群発頭痛とは、片目の奥や頭の前側・後側の辺りが強く痛む発作が、1日に何度も起こり、数週間から数ヵ月間にかけて続く疾患です。近年は、TACS(三叉神経自律神経性頭痛)の範疇にはいります。群発性頭痛は、片頭痛の100分の1くらいの稀な疾患ですが、当院には多くいらっしゃいます。患者さん側から「群発頭痛と思います」と受診するケースはおおむねあっているとの話が学会ででるくらい本人も自覚しやすい病気です。群発頭痛は痛みが起きている期間(群発期)は仕事や生活に支障をきたすため、周囲の理解を得ることが重要です。群発頭痛はある日突然発症する疾患で、片頭痛を持っている方にも起こるため、誤診されることがあります。
片頭痛
片頭痛とは、何らかの原因で脳の血管が急激に拡張することで引き起こされる頭痛で、「ズキンズキン」と脈打つような痛みが頭の片側または両側に起こる疾患です。月に数回や、週に数回の頻度で起こり、片頭痛が起こると数日間続くことが多いです。頭痛の他に、吐き気や嘔吐、光・音・臭いに敏感になるといった症状も起こることがあります。
緊張型頭痛
緊張型頭痛とは、精神的ストレスや、眼精疲労、痛みなどによって筋肉が収縮することが原因で起こる頭痛で、頭が締め付けられるような圧迫感や頭が重く感じるなどの症状が数時間から数日間にわたって起こります。
群発頭痛
群発頭痛とは、片目の奥がえぐられるような強烈な痛みを伴う頭痛です。年に1,2回ほど1か月程度単位で発症し、頭痛が起こる「群発期」には1~2時間程度の激しい頭痛が1日に何度も起こります。国際分類第3版では、三叉神経自律神経性頭痛(TACs)の一つとして分類しており、その他の疾患も類似はしていますが、治療法が異なります。
群発頭痛の原因
群発頭痛が起こる原因ははっきりとはわかっていませんが、体内時計の乱れが関与していると考えられています。体内時計が乱れると、目の奥の血管に異常が生じ頭痛が起こります。また、アルコールの過剰摂取や喫煙、気圧の急激な変化、不規則な睡眠は頭痛を誘発するため、群発期にはこれらに注意することが重要です。
群発頭痛は片目の目の奥が痛くなる?
群発頭痛では、片目の目の奥が痛くなるなどいくつか特徴的な症状があります。下記、群発頭痛で起こる主な症状となります。当てはまるものがありましたら、頭痛治療を専門とする当院までご相談ください。
- 片目の奥や眼球を中心とした激しい痛みが起こる(発作期がかぶった時期に対側に新たな群発頭痛を発症したケースも経験しています)
- 一度発症すると、その回は必ず同じ側にだけ痛みが起こる
- 痛みの起こる側の顔面や目、鼻に発汗や涙が出る、鼻水が出るなどの特異な症状が起こることが多い
- 痛みが側頭部や下あご、歯などに広がることがある
- 明け方や深夜など睡眠に関する時期に痛みが起こりやすく、睡眠時間がずれると発作の時間もずれることが多い
群発頭痛の検査・診断
群発頭痛は特徴的な症状が多い疾患であるため、診断は主に問診で行います。一過性で重度の頭痛が15分~3時間程度継続し、目の充血や鼻水、鼻づまり、発汗、落ち着きがないといった症状を伴い、これらの症状を起こす発作に周期性がある場合は群発性頭痛と診断されます。上述のTACS(三叉神経自律神経性頭痛)には、10分~30分程度の発作をより頻回におこす発作性片側頭痛PH、1~600秒の神経痛様の痛みが頻発かするSUNHA(SUNCT/SUNA)を鑑別することが重要です。ただし、重度の頭痛は脳卒中などの他の深刻な脳の疾患によっても引き起こされるため、MRI検査を行い、他の脳疾患でないことを調べる場合もあります。
群発頭痛の治療
群発頭痛の治療は、主に発作を抑える薬による薬物療法です。片頭痛の発作の治療に使用するトリプタン系の薬が有効ですが、痛みが激しく内服ができない場合には皮下注射や点鼻によって投与します。群発頭痛の発作の出る時期がわかっている場合は、その時期に合わせてベラパミルなどの予防薬を服用することもあります。また、発作時には酸素吸引を行うこともあり、7L/分の酸素吸引を15分吸引することが有効であるとされています。群発頭痛の診断がついている場合は在宅酸素療法(HOT)をお選びいただくこともできます。在宅酸素療法(HOT)とは、ご自宅で酸素濃縮装置または液化酸素装置、酸素ボンベを用いて高濃度の酸素を吸入する治療法です(帝人からレンタルし、相場は1か月単位で3割自己負担で2万円です)。酸素は助燃性があり、引火の危険性があるためご自宅での使用の際には機器の使用方法や緊急時の対処法などについて十分にご理解いただいた上で取り扱いいただく必要があります。酸素濃縮装置は、電源さえ確保できれば長時間の使用が可能であるため便利です。
ほかの上述のTACS(三叉神経自律神経性頭痛)には、10分~30分程度の発作をより頻回におこす発作性変則頭痛PH、1~600秒の神経痛様の痛みが頻発かするSUNHA(SUNCT/SUNA)があり、それぞれ群発頭痛の治療は効きませんので、ご相談ください。
群発頭痛期の発作予防(できること)
飲酒・喫煙を控え規則正しい生活を心がける
飲酒や喫煙、不規則な睡眠は群発頭痛を誘発すると考えられています。日ごろから飲酒や喫煙は控え、規則正しい生活を心がけましょう。特に、群発期には断酒しましょう。
飛行機や高い山への登山、潜水などは避ける
急激な気圧の変化は群発頭痛を誘発すると考えられています。飛行機や登山、潜水はできるだけ避け、どうしてもこれらをする必要がある場合は、医師に相談しましょう。
頭痛の記録
頭痛がどの時期に起こり始めたかや、他にどのような症状が起こったかなどの頭痛の記録を取りましょう。群発頭痛は季節の変わり目に起こりやすいとされており、頭痛が起こる群発期に入ると、連日集中的に頭痛が起こる特徴があります。また、頭痛が起こる前や、頭痛が起こっている間に、目の充血や流涙、鼻汁、鼻づまり、まぶたのむくみ、まぶたの垂れ下がり、前頭部や顔面の発汗、瞳孔が小さくなるなどの症状が起こる方が多いです。頭痛記録をつけておくことで、次回の頭痛が起こる時期の予測や頭痛の前兆を自身で把握することができるようになります。
群発頭痛期の発作予防(できること)
群発性頭痛は治ることがありますか?
群発性頭痛は、時間の経過とともに自然に発作が起こらなくなる方が多いです。発症して間もない時期には、ほぼ毎年のように群発期が出現することがありますが、年齢を重ねるにつれて発作の間隔が長くなったり、痛みが軽くなったりすることがあります。再発を完全に防ぐ確実な方法はありませんが、ベラパミルなどの予防薬を継続的に服用し、生活リズムを整えること、禁酒・禁煙を実践することで再発のリスクを減らすことができます。さらに、医師の管理のもとで早期に治療を開始することで、群発期における痛みの強さや発作の頻度を抑えられる場合があります。
群発頭痛はどの年代に多く発症するのでしょうか?
群発性頭痛は、主に20〜40歳代の男性に多く発症する頭痛です。特に成人期の男性に多く見られますが、近年では女性や50歳以上の方にも発症する例が報告されています。発症の要因としては、体内時計の乱れや自律神経の働きの異常が関係していると考えられ、睡眠リズムの乱れや不規則な生活習慣が誘因になることがあります。
群発頭痛が始まってから痛みのピークはどこですか?
群発期に入ると、発作が始まってからおおよそ1〜2週間の時期に痛みの強さが最も高まることが多いと考えられています。日のうちでは、夜から明け方にかけて発作が出やすく、特に眠りについた後の1〜2時間以内に最も強い痛みが現れる傾向があります。この頭痛は、片側の目の奥に1〜2時間ほど続く非常に強い痛みが繰り返し起こることが特徴です。こうした一定の周期や時間帯の特徴があるため、医師は発作が起こる時間や期間を詳細に記録することを重視し、診断や治療の方針を決めます。
群発性頭痛がある場合、障害年金の対象になることはありますか?
群発性頭痛そのものは、障害年金の等級に明確に定められた対象ではありません。しかし、頭痛の頻度や痛みの強さが重く、日常生活や仕事に大きな支障を及ぼしている場合には、神経疾患などと同様に障害年金の支給対象として認められる可能性があります。ただし、実際の認定は、症状の程度・診断書の内容・日常生活への影響などを総合的に判断して行われるため、個々のケースで結果が異なります。障害年金の申請を考えている方は、まず主治医に相談し、必要に応じて日本年金機構や社会保険労務士へ手続きを確認することが重要です。
群発頭痛は「世界三大激痛」の一つですか?
群発性頭痛は、世界三大激痛の一つとして知られています。一般的には、尿路結石や心筋梗塞と並んで挙げられることが多く、その痛みは「目の奥を刺されるような激痛」と形容されるほど強烈です。ただし、医師のもとで適切に治療や予防を行えば、痛みの期間や頻度を軽減することが可能です。
群発頭痛の重症度はどのくらいですか?
群発性頭痛は、医学的にも極めて強い痛みを伴う頭痛とされており、重症度が非常に高い疾患です。発作の際には、「片側の目の奥を突き刺されるような強烈な痛み」として表現されることが多く、患者様の多くが我慢できないほどの痛みを感じると訴えます。1回の発作は15分〜3時間ほど続き、1日に複数回起こることがあります。このような発作が数週間から数ヵ月の間、ほぼ毎日のように続く(群発期)のが特徴です。そのため、仕事や日常生活に大きな支障をきたすケースも少なくありません。痛みの強さは「VAS(Visual Analog Scale)で10段階中9〜10」と報告されており、尿路結石や心筋梗塞と同程度の激痛とされています。ただし、トリプタン製剤の投与や酸素吸入、予防薬の服用など、適切な治療を行うことで、発作の頻度や痛みの程度を抑えることが可能です。

