- 薬物乱用頭痛とは
- 市販薬でも薬物乱用頭痛になる?
- 薬物乱用頭痛の症状(セルフチェック)
- 薬物乱用頭痛はどれくらい続く?
- 薬物乱用頭痛の離脱症状はどれくらい続く?
- 薬物乱用頭痛の治療(治し方)
- 頭痛ダイアリーをつけましょう
- 薬物乱用頭痛に関するよくある質問
薬物乱用頭痛とは
薬物乱用頭痛とは、頭痛薬の服用回数や頻度が増えることで、脳が痛みを感じやすくなってしまい起こる頭痛です。頭痛薬を服用することで結果的に頭痛が起こる回数が増え、痛みも強くなり、頭痛の症状が悪化していきます。頭痛薬を1ヵ月に10回以上服用する場合は、薬物乱用頭痛を起こす可能性があります。さらに慢性片頭痛に至る倍率も20倍と上昇します。薬物乱用頭痛は市販の頭痛薬を服用して起こる場合がほとんどで緊張型頭痛や片頭痛の患者に多いです。薬物乱用頭痛のリスクになるような薬を避けることが重要です。
市販薬でも薬物乱用頭痛になる?
薬物乱用頭痛を引き起こす薬剤として最も多いのはイソプロフェンやロキソプロフェンなどの消炎鎮痛剤(NSAIDs)です。その他にも、片頭痛の治療に用いられるトリプタン製剤やエルゴタミン製剤、麻薬などでも薬物乱用頭痛を誘発することがあります。トリプタン製剤は少ない服用回数で短時間での使用でも薬物乱用頭痛を引き起こしやすいとされています。数種類の鎮痛成分を含む合剤も薬物乱用頭痛を起こす危険性があります。薬物乱用頭痛は長期的な頭痛を患っているのにもかかわらず、専門医にかからず、自己判断で市販の頭痛薬を使用継続している方に起こる場合が多いです。よく患者さんに説明する際には、飴が毒に変わる数に注意と伝えています。
薬物乱用頭痛の症状(セルフチェック)
- 頭痛が起こる日が月に15日以上ある
- 頭痛薬を飲む日が月に10回以上ある
- 頭痛薬が効かなくなってきた
- 起床時にも頭痛がある
- 薬を飲んでも頭痛が強くなる
- 頭痛の程度や痛む場所などが異なる日がある
- 毎月数回程度の片頭痛があって薬の服用をはじめた
- 予防的に市販薬を服用している
薬物乱用頭痛はどれくらい続く?どれくらいで治る?
薬物乱用頭痛は、薬の服用を中止することで治療を行います。薬の服用を中止すると、中止後1~2週間は頭痛の症状がつらく、その後も離脱症状に苦しむかもしれません。そのため予防薬を処方しながら減薬を試みるのが一般的です。頭痛発作がおきても、薬を飲まずに冷やしたり寝たりしてやりすごす時を含ませると離脱が促進されます。
薬物乱用頭痛の離脱症状はどれくらい続く?
薬の服用を中止してから2~10日間程度は離脱症状が続くとされています。薬剤別の離脱症状の期間はトリプタンで4.1日、エルゴタミンで6.7日、鎮痛剤で9.5日とされています。離脱症状がつらい時期を乗り切るために、漢方製剤や頭痛薬などを最初の2~4週間は予防的に服用します。離脱に成功すると、起床時の頭痛がなくなり、頭痛のない日が何日も続き、頭痛が起こっても頓服薬でしのぐことができるようになります。予防薬は3~6ヵ月の服用後、徐々に減らしていき、服用を中止することを目指します。
薬物乱用頭痛の治療(治し方)
薬物乱用頭痛の治療は、薬物乱用頭痛の原因となる薬剤の服用を中止することで行います。薬剤の使用をすぐに中止すると離脱症状として激しい頭痛が起こるため、原因薬剤を薬物乱用頭痛の原因とならない薬剤に変更したり、予防薬を服用したりして原因薬剤を中止していきます。中止の方法は2種類あり、「徐々に服用量を減らしていく方法」と「すぐに服用を中止する方法」があります。原因薬剤を中止したとしても、最初は頭痛が激しく、頭痛の回数も多い状態が続きますが、徐々に頭痛の強さは弱まり、頭痛の回数は減少してきます。治療が進み、薬物乱用頭痛が治まり、再発しないようになったら、もともとの頭痛の原因となっていた片頭痛や緊張型頭痛の治療を行っていきます。なお、薬物乱用頭痛に伴って気分障害や不安障害、物質依存などの精神疾患が見られる場合は、それらの治療も同時に行う必要があります。薬物乱用頭痛は再発率が高いため、頭痛外来などの専門的な医療機関で適切な治療を受けることが重要です。また、精神疾患が認められる場合は、精神科や心療内科による治療も同時に行っていくことになります。
頭痛ダイアリーをつけましょう
頭痛ダイアリー(頭痛の記録)をつけましょう。頭痛ダイアリーとは、どのような頭痛が何時ごろに起こり、どのような薬が効いたなどの記録です。頭痛ダイアリーをつけると、自身の頭痛の傾向や周期などがわかるようになり、頭痛を未然に対策できるようになります。医師へも状態を伝えることが容易なため、当院では「見えない頭痛の見える化ツール」と説明して使用を促しています。最近は、アプリやラインミニアプリなど携帯で管理できるようになりました。
薬物乱用頭痛に関する
よくある質問
薬物乱用頭痛とカフェインに関連はありますか?
カフェインは、薬物乱用頭痛と関連があります。カフェインには、一時的に血管を収縮させて頭痛を和らげる作用がありますが、毎日多量に摂取すると脳がカフェインに依存し、摂取をやめたときに血管が拡張して頭痛が起こる「離脱頭痛」を引き起こすことがあります。
また、カフェイン入りの鎮痛薬(エキセドリンなど)を頻繁に使用していると、薬の過剰使用とカフェインの依存が重なり、薬物乱用頭痛を悪化させることがあります。適量を守ることが大切です。
薬物乱用頭痛とうつ病に関連はありますか?
薬物乱用頭痛とうつ病には関連があります。薬物乱用頭痛の患者さんには、うつ病や不安障害を併発している方が多くいらっしゃいます。慢性的な痛みがストレスや不眠を引き起こし、精神的に落ち込みやすくなる一方、「迷ったら飲まない」といった意識や「頭痛予防薬の駆使」にて、薬物乱用頭痛と一緒にうつ不安が改善することが明らかになってきています。
カロナールで薬物乱用頭痛になりますか?
カロナールは比較的安全性の高い鎮痛薬ですが、使用頻度が多すぎる薬物乱用頭痛を引き起こす可能性があります。具体的には、月15日以上、3か月以上連続して使用の場合に、薬物乱用頭痛のリスクが高まります。自己判断での連用を避け、医師の指示に従うようにしましょう。
薬物乱用頭痛にならない薬はありますか?
絶対に薬物乱用頭痛にならない薬はありませんが、頭痛予防薬を適切に処方して、頭痛ダイアリーにて改善を評価していくことでなりにくくなります。薬に対する脳依存が原因となっているため、飲むことが習慣化する前に、正しい頭痛との向き合い方を知る必要があります。この、抗てんかん薬や抗うつ薬、降圧薬と呼ばれる予防薬は、頭痛の頻度を減らす目的で使用するため、薬物乱用頭痛に繋がることがありません。
薬物乱用頭痛になりやすい人はいますか?
もともと片頭痛や緊張型頭痛を持っている人、頭痛が長期間続いている人、ストレスが多い、睡眠が不規則、完璧主義な人は薬を過剰に使用しやすいため、薬物乱用頭痛になりやすいとされています。また、女性や中高年以降の方、カフェイン摂取が多い方もリスクが高いとされています。薬に頼り過ぎず、生活習慣の見直しや頭痛日記にて頭痛を管理できるようにしていきましょう。
薬物乱用頭痛の予防薬はありますか?
薬物乱用頭痛では、痛みを止める薬ではなく、頭痛の頻度や強さを減らす予防薬を使用します。代表的な薬として、抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウムなど)や抗うつ薬(アミトリプチリンなど)、カルシウム拮抗薬があります。
また、片頭痛がある場合には、CGRP関連抗体薬(エムガルティ・アジョビなど)が有効な場合があります。予防薬は頭痛のコントロールを目的としており、痛み止めの使用回数を減らし、薬物乱用頭痛の改善に繋がることが期待されます。
