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片頭痛とてんかん

てんかんと片頭痛について

てんかんと片頭痛はどちらも発作を伴う慢性の脳疾患で、てんかん発作時に起こるてんかん性頭痛は、脳血流が増加して血管拡張をきたすことで起こるため、片頭痛の発生メカニズムと似ています。また、てんかん(後頭葉てんかん)発作の前兆として視覚性の異常が起こることがあり、これは片頭痛の前兆として見られることの多い「閃輝暗点」と似ているため、頭痛があり、てんかん発作が前兆だけで終わる場合は、てんかんと片頭痛の判別が困難な場合もあるなど、てんかんと片頭痛はよく似た症状を起こします。


てんかんと片頭痛の共通点

  • 生涯にわたる疾患である
  • 遺伝の可能性がある
  • 伝染性(他の人に移ること)はない
  • 発作を起こす
  • 吐き気、光の点滅、感覚過敏になるなどの前兆がある
  • ストレス、アルコール、睡眠の変化などが誘因となる
  • 脳の過興奮性など、同様の根本的な要因があると考えられている
  • 神経内科で治療することが多い
  • 同じ薬で予防できる場合もある

てんかんと片頭痛の違い

  • 患者数は片頭痛の方が多い(片頭痛:10億人程度、てんかん:5千万人程度)
  • 発作時間が異なる(片頭痛:数時間から数日、てんかん:数秒から数分)
  • 片頭痛は女性に多いが、てんかんは性差がない

閃輝暗点(目の前にキラキラした光が見える)とは?

てんかん(後頭葉てんかん)では、目の前に光が見えたり、暗点が見えたり、カラフルな水玉が見えたりなどの視覚発作を起こすことがあります。後頭葉以外に広がらなければ、記憶を失うことはなく、視覚発作に続いて頭痛が起こることもあるため、後頭葉てんかんは片頭痛と間違われることもあります。なお、てんかんによる視覚発作は閃輝暗点のようにギザギザとした形状をしておらず、持続時間が数分以内と短いという特徴があります。


てんかんと片頭痛ともにデパケン(バルプロ酸ナトリウム)?

てんかんと片頭痛の治療には「デパケン」もしくは「デパケンR」という薬(一般名:バルプロ酸ナトリウム)が使用されます。デパケンは1967年に抗てんかん薬として研究がすすめられ始め、その後1995年に双極性障害の躁状態の治療に有効であることがわかり、1996年には片頭痛の発症を抑制する効果があることがわかり、片頭痛の発症抑制剤として承認を受けたという背景があります。これらのてんかんや躁状態、片頭痛の3つは脳が異常興奮を起こすことによって起こっていると考えられています。日本では1967年に協和キリン株式会社がバルプロ酸ナトリウムの開発を始め、各種てんかん(特に全般てんかん)に高い有効性が認められる「デパケン錠」、「デパケンシロップ」の販売が開始されました。また「デパケン」は他の同種の薬と比べ体内ですぐに代謝されてしまい、作用時間が短いという欠点があったため、それを補うため徐放剤(体内で徐々に成分が溶け出す薬)として「デパケンR」が開発されました。その後、海外での報告などにならい、日本においても躁状態や片頭痛の治療薬として使用されるようになりました。


片頭痛とてんかんに関する
よくある質問

てんかんでも頭痛が起こるようですが片頭痛とは違いますか?

はい、異なる病気です。ただし、てんかん発作の前後に頭痛が生じることがあり、これを「てんかん性頭痛」と呼びます。てんかんによる頭痛は、発作の直前や直後に起こり、比較的短時間で治まることが多いのが特徴です。一方、片頭痛は数時間から数日にわたって続くことがあり、光や音に敏感になるなどの随伴症状を伴います。

片頭痛とてんかんは脳波検査にてわかりますか?

てんかんは、脳波検査で特徴的な異常波(スパイクや鋭波)が見つかることで診断されることがあります。一方、片頭痛では通常、脳波に明確な異常は認められません。ただし、片頭痛とてんかんはどちらも脳の興奮性が関与しているため、まれに両者が合併することもあります。

片頭痛とてんかんはMRI検査にてわかりますか?

MRI検査は、脳に構造的な異常(脳腫瘍、血管の異常、萎縮など)がないかを確認するために有効です。てんかんでは、一部の原因(海馬硬化症など)がMRIで見つかることがありますが、片頭痛では多くの場合、画像上の異常は認められません。いずれの検査も、症状に応じて行うことが大切です。

片頭痛とてんかん、いずれもストレスが原因となることありますか?

はい。ストレスはどちらの発作も誘発する重要な要因です。精神的な緊張や睡眠不足、環境の変化などがきっかけとなり、脳の神経活動のバランスが崩れて発作や頭痛が起こることがあります。過度なストレスを避け、規則正しい生活リズムを保つことが発作予防につながります。

片頭痛とてんかんで食べてはいけないものはありますか?

明確に「食べてはいけない」ものはありませんが、片頭痛の方はチョコレート、チーズ、赤ワインなどに含まれる「チラミン」が誘因となることがあります。また、てんかんの方では、過度な糖分摂取や空腹状態が発作を誘発することがあります。バランスの良い食事を心がけ、個人の体調に合わせた食習慣を整えることが大切です。

片頭痛とてんかんで飲んではいけないものはありますか?

アルコールはどちらの病気でも発作や頭痛を誘発することがあるため、できるだけ控えることが望ましいです。また、カフェインを過剰に摂ると睡眠の質が低下し、発作リスクが高まる場合があります。脱水も頭痛やてんかん発作の誘因となるため、水分補給をしっかり行うことも重要です。

片頭痛とてんかんで日常生活において注意すべきこと(気をつけること)はありますか?

睡眠不足、強いストレス、過度な疲労、アルコール摂取、長時間のスマホやパソコン使用などは、どちらの病気にも悪影響を与えます。十分な睡眠と規則正しい生活を心がけ、発作や頭痛のパターンを記録しておくと治療に役立ちます。また、てんかんの場合は発作時の安全確保(高所作業・水場・運転などを避ける)も重要です。

この記事の執筆者

院長 日暮 雅一 ひぐらし まさかず

院長日暮 雅一 ひぐらし まさかず

略歴

1999年 横浜市立大学医学部 卒業
横浜市内複数の基幹病院で修練
2005年 小田原市立病院 
脳神経外科主任医長
(2005年度 脳神経外科部長代行)
2009年 横浜市立大学大学院医学研究科
脳神経外科助教
(2011年度 脳神経外科教室医局長)
2012年 Australia Macquarie大学留学
医工連携学research fellow
2014年 新緑脳神経外科・
横浜サイバーナイフセンター医長
2016年 ほどがや脳神経外科クリニック開設
2019年 医療法人社団 正念 設立

資格

  • 医学博士(神経薬理学)
  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本頭痛学会専門医/指導医
  • 日本脳卒中学会専門医/指導医
  • 日本認知症学会専門医/指導医
  • 認知症サポート医
  • 日本医師会認定産業医
  • 身体障害者福祉法15条指定医(肢体不自由 言語咀嚼)
  • 難病指定医
  • 自立支援指定医療機関(てんかん)

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