TOPへTOPへ

水頭症

水頭症とは

頭蓋内の脳室と呼ばれる脳内の部屋と、くも膜下腔(くも膜と脳の間の隙間)には、髄液という水が貯留されています。この髄液が頭蓋内に過剰に貯留してしまい、頭蓋内圧が高くなってしまう疾患を水頭症といいます。
髄液は1日に約500mL、大脳半球にある側脳室内の脈絡叢という部分で産生されます。その後、髄液はモンロー孔を通って第三脳室に入り、そこから中脳水道を経過して第四脳室へとたどり着きます。そして脳室から脳および脊髄全体のくも膜下腔へと拡がり、最後は脳表のくも膜顆粒から静脈に吸収されます。
水頭症は、この髄液の循環が何らかによって障害されてしまうことによって起こります。

特発性正常圧水頭症(iNPH)とは

何かしらが原因で、頭蓋内に脳脊髄液が溜まり、脳が圧迫されてしまう疾患を特発性正常圧水頭症(とくはつせいせいじょうあつすいとうしょう)といいます。主な症状としては歩行障害、認知症、尿失禁などがあげられます。“idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus”の頭文字からiNPHと呼ばれることもあるこの疾患は、「治療できる認知症」としても注目されています。
iNPHは、その特徴が加齢にともなうものと似ているために見逃されやすく、罹患者数は全国に37万人程度だと言われている一方で、治療に結びつく患者様の数はそのうち1割にも満たないという現状です。
早期に治療を行うことにより、iNPHの症状は改善しやすくなるという報告もあるため、少しでも思い当たる症状がある場合は、お早めに当院までご相談ください。第2,4水曜日午前担当の市大センター病院 高木良介先生がそのエキスパートです。

代診医師紹介


水頭症の原因

髄液は、99%が水で構成された無菌の液体で、体の中で一番綺麗な液体だとも言われています。1日の産生量は約500mLで、産生から吸収まで1日3回循環して入れ替わっています。髄液の総量は大人で約150mL、小児で100mL程度です。
水頭症は、この髄液が過剰に産生されたり、循環路が閉塞してしまったり、吸収に障害がでたりしてしまい、循環が正しく行えなくなることによって起こります。

非交通性水頭症

非交通性水頭症は、脳室の中にある脳脊髄液の流れの悪化が原因で起こる水頭症です。この疾患は小児によく見られ、原因としては中脳水道(第三脳室と第四脳室を繋ぐ道)の生まれつきの狭窄や、脳室内部の腫瘍や出血があげられます。

交通性水頭症

交通性水頭症は、脳脊髄液の循環路である脳や脊髄の表面を覆うくも膜下腔が狭くなってしまったり、脳脊髄液がうまく吸収できなかったりすることで起こる水頭症です。この水頭症は成人によく見られ、原因としては頭蓋内出血や髄膜炎、脳腫瘍のほか、生まれつきの脳の形態異常によるものもあります。


水頭症の症状

水頭症の症状水頭症の症状は、どの水頭症であるかと、発症する月齢や年齢によって異なります。
小児の場合、多くは非交通性水頭症です。新生児や乳児でよく見られる症状としては、頭囲の拡大、前頭部の突出、嘔吐、ウトウトすることが多い、些細な刺激で泣いてしまう、などがあげられます。また、幼児や学童によく見られる症状は、頭痛、嘔吐、視神経乳頭がむくむ、眼球を外側に動かす神経の麻痺、筋肉や腱が意図せず周期的に収縮、弛緩するといったものになります。
成人の場合、非交通性水頭症では、頭痛、嘔吐、意識障害などが見られ、急激に症状が悪くなるケースもあります。これらの症状が起こるのは、非交通性水頭症では脳圧が高くなるためです。
一方、交通性水頭症では多くの場合、脊髄液がたまっても脳圧はそのままで、歩行障害、認知症、尿失禁といった特徴的な症状があらわれます。


水頭症の検査

水頭症の検頭蓋骨の成長は2~3歳まで続きます。それまでの新生児や乳児の期間は、頭蓋骨は完全にくっついていないため、脳脊髄液が溜まると、頭囲が大きくなります。そのため、頭蓋骨の成長が終了し、頭囲の変化が見られなくなるまでの間、頭囲の測定は、水頭症かどうかを調べるにあたっては重要になります。
頭囲の変化が見られなくなって以降は、頭痛、嘔吐、意識障害、目の異常といった症状が現れていないかを診察で確認するほか、脳の状態を調べるためにCT検査やMRI検査も行います。
また、高齢者によく見られる特発性正常圧水頭症が疑われる場合は、診察で歩行障害や尿失禁、認知症などの特徴的な症状が出ていないかを確認し、CT検査、MRI検査を行います。さらにそれに加え、背骨に針を刺して脳脊髄液を少量抜き取る検査である髄液タップテストという検査を実施することもあります。この検査の前後で歩行や排尿、認知機能などの症状が改善された場合、特発性正常圧水頭症である可能性が高いです。

MRI検査


水頭症の治療

水頭症の治療法は、何が症状を引き起こしているかによって異なります。よく見られるのは脳脊髄液の循環経路や産生、吸収に異常があるケースです。この場合、主に行われる治療は溜まりすぎた脳脊髄液を調節するという治療法がとられます。具体的には、シャント手術(脳室にカテーテルを挿入し、脳脊髄液を腹腔に流すことによって脳圧を制御する方法)や、腰椎-腹腔シャント手術(背骨の中の脊髄液を腹腔に流す方法)を行うこともあります。
非交通性水頭症の場合は、内視鏡的第三脳室底開窓術という神経内視鏡手術も選択肢のひとつです。この方法では、脳脊髄液が流れ出る道を作るため、内視鏡で脳室に穴を開けてくも膜下腔と繋ぎます。この手術はシャントを入れる必要がないため、合併症の危険性が少なく済むというのがメリットです。
これらの手術は全身麻酔で行い、1時間程度で終了します。手術が必要だと判断された場合、提携している医療機関をご紹介いたします。


水頭症に関するよくある質問

水頭症は寿命に影響しますか?

水頭症そのものが直接寿命に影響することはありません。しかし、未治療のまま放置すると脳圧が上がり、意識障害や嘔吐、痙攣などの重篤な症状を来すことがあります。特に、非交通性水頭症や急性の水頭症では、急速に症状が悪化し、命に関わることがあります。水頭症は手術をはじめ、適切な治療を受けることで脳圧をコントロールして問題なく日常生活を送れる病気です。まずは適切な治療を早期に受けるようにしましょう。

水頭症の赤ちゃんの特徴はありますか?

水頭症の赤ちゃんでは、頭蓋骨が柔らかいために頭囲の急な拡大が特徴的です。具体的には、頭の前部分(前頭部)が突出した「でっぱり頭」や、頭の上部分(頭頂部)が異常に大きくなる傾向にあります。その他、嘔吐が多い、過度に眠る、刺激に敏感でよく泣く、授乳が上手くできない、顔色が悪いなどがあります。また、目の異常として、眼球を上に向ける傾向があります。

水頭症の人はIQ高いですか?

水頭症の人にIQの特徴はありません。IQの高い人も低い人もいます。ただし、水頭症の発症時期や重症度、治療の有無によりIQが左右されることはあります。長期間、髄液の圧迫が続く場合や未治療の場合、神経発達や認知機能に影響が出ることがあります。

水頭症は難病指定されていますか?

水頭症のうち、先天性水頭症や原因が明らかな場合、条件を満たせば難病指定になります。しかし、特発性正常圧水頭症は難病指定されていません。医療費助成や制度の対象となるかは、水頭症の種類や診断内容により異なります。まずはご相談ください。

水頭症の人に発達障害は多いですか?

先天性や小児期に発症した非交通性水頭症では、脳の発達に影響を与えることがあり、その場合、注意力や学習能力の低下、運動発達の遅れが見られることもあります。しかし、水頭症だから必ずしも発達障害というわけではありません。発達障害になるリスクは水頭症の種類や発症時期、治療のタイミングにより異なります。適切な治療やリハビリを行うことで発達への影響を最小限にすることが出来ます。

水頭症は遺伝しますか?

多くの水頭症は遺伝性ではありません。先天性の原因がある場合も、家族間で必ず遺伝するわけではありません。ただし、特定の先天性疾患や染色体異常を伴う水頭症の場合、家族内で発症リスクが通常より少し高まります。ご家族に水頭症の既往や先天性疾患がある場合、必要に応じて出生前検査などを行うことも検討しましょう。

水頭症になると運動など日常生活に制限がありますか?

水頭症の方がどの程度運動など日常生活に制限があるかは、水頭症の種類や治療状況により異なります。
一般的にシャント手術後は、退院後に軽い運動や歩行リハビリを行っていただくことは可能です。ただし、頭部や腹部にカテーテルを通しているため、激しい運動や衝撃を伴うスポーツは医師の指示があるまで控える必要があります。
また、非交通性水頭症にて内視鏡手術を受けた方は、シャントが不要な場合も多く、運動制限は少な目となります。ただし、手術後の感染や出血のリスクがありますので、医師の指示に従うようにしましょう。
また、水頭症の方全体に言えることとして、一般的な生活に制限はありませんが、転倒や頭部外傷に注意するようにしましょう。

水頭症は生まれる前に分かりますか?

一部の水頭症は妊娠中の超音波検査(胎児エコー)により発見されます。特に、脳室の拡大や脳の形態異常が確認できれば出生前診断が可能です。ただし、軽度の水頭症や一部の交通性水頭症に関しては、出生後に明らかとなります。

水頭症を放置するとどうなりますか?

水頭症を放置することで脳圧が上昇して神経症状が進行します。
子ども(小児)の場合、頭囲が異常拡大して頭痛や嘔吐、視神経障害、運動や発達の遅れが見られます。
大人(成人)の場合、歩行障害や認知症、尿失禁の悪化、意識障害、痙攣などが見られます。
非交通性水頭症では、急激に症状が進行することもあり、緊急手術を要することもあります。早期に治療を受けなければ歩行や認知機能の改善が困難となる場合もありますので、少しでも水頭症の症状が疑われる場合、なるべく早めにご相談ください。

この記事の執筆者

院長 日暮 雅一 ひぐらし まさかず

院長日暮 雅一 ひぐらし まさかず

略歴

1999年 横浜市立大学医学部 卒業
横浜市内複数の基幹病院で修練
2005年 小田原市立病院 
脳神経外科主任医長
(2005年度 脳神経外科部長代行)
2009年 横浜市立大学大学院医学研究科
脳神経外科助教
(2011年度 脳神経外科教室医局長)
2012年 Australia Macquarie大学留学
医工連携学research fellow
2014年 新緑脳神経外科・
横浜サイバーナイフセンター医長
2016年 ほどがや脳神経外科クリニック開設
2019年 医療法人社団 正念 設立

資格

  • 医学博士(神経薬理学)
  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本頭痛学会専門医/指導医
  • 日本脳卒中学会専門医/指導医
  • 日本認知症学会専門医/指導医
  • 認知症サポート医
  • 日本医師会認定産業医
  • 身体障害者福祉法15条指定医(肢体不自由 言語咀嚼)
  • 難病指定医
  • 自立支援指定医療機関(てんかん)

詳しくはこちら