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一過性脳虚血発作

一過性脳虚血発作とは

一過性脳虚血発作(TIA)とは、一時的に脳の血流が止まることで、手足の麻痺やしびれ、運動障害、言語障害などの脳梗塞と同じ症状が生じ24時間以内に自然に消失する疾患です。ほとんどの場合で、症状は1時間程度で消えますが、その後に脳梗塞を発症する可能性が高いため、放置は厳禁です。一過性脳虚血発作を起こした方の15~20%は3ヵ月以内に脳梗塞を起こし、その半数が発作から48時間以内に発症します。一過性脳虚血発作の治療では、発症の原因に合わせて抗血小板薬や抗凝固薬を投与して脳梗塞の予防を図ります。また、薬物療法の他に、頸動脈内剥離術や頸動脈ステント留置術などの手術が行われることもあります。また一過性脳虚血発作は生活習慣病が関係するため、生活習慣病の治療も行う場合もあります。


一過性脳虚血発作の原因

一過性脳虚血発作は、血栓やコレステロールの塊の「プラーク」が血管の流れを阻害することで引き起こされます。動脈硬化が進行すると、さらに血流が悪くなり、最終的には血管が詰まってしまいます。この血管の詰まりが24時間以内に解消される場合が「一過性脳虚血発作」で、解消されない場合は「脳梗塞」となります。血管が再開通したとしても、高確率で再度詰まり、脳梗塞を発症します。

脳梗塞


一過性脳虚血発作の症状

一過性脳虚血発作の症状は、さまざまですが、半身麻痺や片手の力が入らない、片目が急に見えなくなるなどがあります。一過性脳虚血発作を発症した方のうち約20%が90日以内に脳卒中を起こし、その中でも約半数の方が48時間以内に発症するため、一過性脳虚血発作を発症したらすぐに病院を受診しましょう。


脳卒中かもと思ったときは?

脳卒中の疑いがある場合は、ただちに119番に電話して救急要請をしてください。脳卒中は早期発見・早期治療が悪化を防ぐうえで最も重要で、その後の回復を左右します。発見・治療が遅れると、症状の悪化や複雑な合併症、後遺症などを生じる可能性が高まります。脳梗塞の場合は、発症後4.5時間以内であれば、血栓溶解療法(t-PA)という血栓を溶かす治療が可能で、救命率が高く、後遺症も軽くなる可能性があります。

ACT-FAST(アクト・ファスト)

ACT-FAST(アクト・ファスト)とは、米国脳卒中協会が提唱している、脳卒中の初期症状のチェック方法です。ACTは「行動」を意味しておりFASTは「すばやく」という意味とFace、Arm、Speech、Timeの頭文字を表しています。Faceは「イー」というと口が歪むことを表しており、Armは両手を前に水平に上げると片側の腕が落ちること、Speechは短い文が上手く言えなかったり、呂律が回らないこと、Timeはすぐに救急車を呼び、4.5時間以内に病院へ行くことを表しています。

脳卒中が疑われる場合は、FASTのチェック項目を確認し当てはまるものがある場合には、ただちに病院へ行きましょう。院長が参加している神奈川県脳神経科医会で提唱しているACVS急性脳血管症候群はより包括的概念で、虚血(TIA)のみならず、脳出血やてんかんも広く含むことをしめしております。


一過性脳虚血発作に関するよくある質問

一過性脳虚血発作は何度も繰り返すことがありますか?

一過性脳虚血発作は、一度起こっても再び発症することがあります。これは、血管に生じた動脈硬化や血栓のかけらが再度血流を妨げ、短時間だけ脳への血の流れが止まるためです。繰り返し起こる場合は、今後脳梗塞を発症するリスクが高くなるため、速やかな検査と治療が欠かせません。特に、発作の発生後48時間以内に脳梗塞を起こす例が多いことが知られているため、症状が一時的に治まっても自己判断で放置せず、早めに医療機関を受診することが大切です。

一過性脳虚血発作で入院が必要な場合、入院期間はどのくらいになりますか?

一過性脳虚血発作を起こした場合、脳梗塞に進行する危険性を詳しく調べるために、入院して検査を受けることがあります。入院の日数は、症状の重さや検査の内容によって異なりますが、一般的には数日から約1週間です。入院中には、MRI検査や頸動脈エコー、心電図、血液検査などを実施し、原因を特定したうえで、再発を防ぐための治療(抗血小板薬・抗凝固薬の使用や生活習慣の改善など)が行われます。

一過性脳虚血発作にはどのような前兆や初期症状がありますか?

一過性脳虚血発作の前触れとして、体の一方がしびれる、力が入りにくい、言葉が出にくい、片方の目が見えづらい、口元がゆがむ、ふらつく、めまいがする などの症状が現れることがあります。これらの症状は一時的で、数分から1時間ほどで自然に治まることも少なくありません。しかし、これらは脳梗塞の前兆である可能性が高く、放置すると重篤な後遺症を残す危険があります。そのため、症状が治まっても油断せず、できるだけ早く医療機関を受診することが重要です。

一過性脳虚血発作はMRIでわかりますか?

はい。MRI検査(とくに拡散強調画像:DWI)は、一過性脳虚血発作の診断に役立ちます。発作からあまり時間が経っていない場合には、脳の血流が一時的に途絶えた部分や、小さな脳梗塞の痕跡を確認できることがあります。ただし、症状が完全に治まってから時間が経過している場合には、画像上に異常が現れないこともあります。そのため、発作を疑ったらできるだけ早い段階でMRI検査を受けることが望ましいとされています。

めまいは一過性脳虚血発作の症状として現れることがありますか?

はい。めまいは一過性脳虚血発作の症状として現れることがあります。特に、脳幹や小脳の血流が一時的に不足した場合、平衡感覚をつかさどる神経が影響を受け、ふらつきや回転するようなめまいを感じることがあります。ただし、めまいは耳の障害(たとえば良性発作性頭位めまい症やメニエール病など)でも生じるため、めまいが繰り返す、片側の手足にしびれがある、言葉が出にくいといった症状を伴う場合には、脳の血流に異常が起きている可能性を考え、速やかに医療機関を受診することが大切です。

一過性脳虚血発作は、どのように再発を防ぐことができますか?

一過性脳虚血発作の再発を防ぐためには、原因の把握と生活習慣の改善、そして適切な治療の継続が欠かせません。まず、発作の背景にある動脈硬化や血栓形成のリスクを減らすために、高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病をきちんとコントロールすることが重要です。医師の管理のもとで、血圧・血糖値・コレステロール値を適正範囲に保つことが、脳梗塞の予防にも直結します。さらに、禁煙・飲酒量の適正化・適度な運動・塩分や脂質を控えた食事など、日常生活の改善も再発防止に役立ちます。必要に応じて、医師の判断のもとで抗血小板薬や抗凝固薬が処方され、血栓が再びできるのを防ぐ治療が行われます。一過性脳虚血発作は脳梗塞の前触れとして重要な警告サインです。症状が治まっても安心せず、医療機関での継続的な通院・フォローアップを続けることが再発予防につながります。

この記事の執筆者

院長 日暮 雅一 ひぐらし まさかず

院長日暮 雅一 ひぐらし まさかず

略歴

1999年 横浜市立大学医学部 卒業
横浜市内複数の基幹病院で修練
2005年 小田原市立病院 
脳神経外科主任医長
(2005年度 脳神経外科部長代行)
2009年 横浜市立大学大学院医学研究科
脳神経外科助教
(2011年度 脳神経外科教室医局長)
2012年 Australia Macquarie大学留学
医工連携学research fellow
2014年 新緑脳神経外科・
横浜サイバーナイフセンター医長
2016年 ほどがや脳神経外科クリニック開設
2019年 医療法人社団 正念 設立

資格

  • 医学博士(神経薬理学)
  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本頭痛学会専門医/指導医
  • 日本脳卒中学会専門医/指導医
  • 日本認知症学会専門医/指導医
  • 認知症サポート医
  • 日本医師会認定産業医
  • 身体障害者福祉法15条指定医(肢体不自由 言語咀嚼)
  • 難病指定医
  • 自立支援指定医療機関(てんかん)

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